――保育園での絵本作りが土台に
今から約15年ほど前、私は陶彩画の研究をしながら毎週3回、保育園に通って3歳、4歳、5歳の子どもたちと絵を描く活動をしていました。はじめは、絵を描くことができなかった子どもたちも、手や足を使って絵を描くアクションペインティングなどを取り入れていくうちに、自分の心と手がつながっていき、少しずつ自分のイメージが表現できるようになっていくんです。
そんな子どもたちと、毎年卒園制作に「絵本」を作っていたのですが、その中の「いのちのたね」という作品が、「いのちのまつり ヌチヌグスージ」の土台になっています。
陶彩画とは、陶板に釉薬をのせて焼成するという作業を幾度も繰り返し、描き上げたもの。有田焼の“絵付け”を基本に、草場が編み出した独自無二の技法。
――「いのちのつながり」を子どもたちにどう伝える?
子どもたちと接する中で、言葉がよく理解できない子どもたちに、形のないものをどうやって伝えるのか、数の概念のない子どもたちに、ご先祖様が本当にたくさんいることをどうやって伝えるのか。試行錯誤が続きました。
子どもたちがイメージしやすい方法……
私は子どもたちに名刺大のカードを配り、そこに自分の親、おじいちゃん、おばあちゃん、ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃん、会ったこともないご先祖様の顔を1カ月かけて何枚も、何枚も描いてもらったのです。そして、書き上がった絵を広い教室の床に全部並べ、子どもたちにご先祖様を目で、そして、体で感じてもらいました。
保育園での10年にわたる活動は、「愛」や「慈愛」などを伝えたいと思っていた僕に、どうしたらそれらを伝えることができるのか学んだ大切な時間でした。
――「いのちの尊さ」「いのちがここにあることは、キセキだ」
ということを、子どもたちに伝えたい!
2003年7月、長崎市で12歳の少年が4歳の男児を殺害した事件が起きました。そして、2004年には佐世保市で、少女が同級生の女の子を殺害する事件が起きました。「いのちの大切さ」を伝えなければと、思ったんです。
今、生きている、「いのち」があるということは、奇跡的なこと。ご先祖様の誰か一人でもいなかったら、「いのち」は続かない。宇宙のはじまりからずーっと、ずっと「いのち」はつながっているです。それも、氷河期時代なども乗り越えて。今ある「いのち」は、あなただけの「いのち」ではなく、ご先祖様みんながつないでくれた「いのち」であることを、伝えなくてはと思ったんですね。それで、以前に保育園で作った絵本を土台に絵本の制作を始めました。
物語は、沖縄を訪れた少年・コウちゃんがご先祖様を供養するお祭り「清明(シーミー)祭」を偶然見たところからスタートする。コウちゃんは、そこで出会ったオバアに、ご先祖様の話を聞き、自分には宇宙が始まったときから、ずっとつながっているご先祖様がたくさんいることを知る。
――命は自分だけのものではない
小学校などでお話をするときに、子どもたちに聞くんです。「キミたちの心臓は誰が動かしている?」。ほとんどの子どもたちが「自分」と答えます。そこで、僕は「自分で動かしているなら、止めてごらん」と言うと、「そんなのムリ〜」って。
「自分の力で生きている」と思いがちですが、これまで命をつないでくれたたくさんのご先祖様に守られて、生きているんですよね、私たちは。決して、自分ひとりで生きているわけではない。
これを子どもたちに伝えるには、どうしたらいいか。いろいろ考えて、絵本のご先祖様がたくさん描かれたあのページを大きく印刷し直して、特製の「いのちのベスト」をつくったんです。それを子どもに着せるんです。
そして、こんな話もします。
AくんがBくんを殴ったとする。Aくんは、Bくんだけを殴ったと普通は思います。でも、このベストを着た子を殴ると……。一人でなく、Bくんの命をつなげてきたご先祖様全員を殴ったことになるのがわかりやすいわけですよね。「今、ここにあるみんなの「いのち」は、自分だけの「いのち」ではなく、ご先祖様のもいっしょに生きている「いのち」って、実感してほしいんです。
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