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気管支喘息の治療は大きく分けて二つのグループに分けることができます。一つは息が苦しい発作(呼吸困難発作)に対するものですし、もう一つは発作の予防をするための治療です。この順で日頃行っているやり方をご紹介します。いろいろな病気の治療法は、大づかみをすると医者による違いはあまりありませんが、細かな部分では違うこともありますので、一つの参考にしていただければ幸いです。
発作の程度を判断することが大事です。日本アレルギー学会が発表している「アレルギー疾患治療ガイドライン」というものがありますが、その中の小児気管支喘息の項では発作の程度を3段階に分けてそれぞれ呼吸の様子や日常生活の送り方、睡眠の状態などで判断する分類を示しています。
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小発作は:
呼吸の状態として、軽い喘鳴があり、軽い陥没呼吸を伴うこともある;遊びは、普通;睡眠は、普通;機嫌は、普通に話をする;食事は、普通
中発作は: 呼吸の状態は、明らかな喘鳴と陥没呼吸、呼吸困難を認める;遊びは、やや困難;睡眠は、ときどき目を覚ます;機嫌は、やや不良、話しかければ偏耳をする;食事は、やや不良
大発作は: 呼吸の状態は、著明な喘鳴、呼吸困難、起坐呼吸を呈し、時にチアノーゼを認める;遊びは、不能またはそれに近い状態;睡眠は、不能またはそれに近い状態;機嫌は、不良、話しかけても返事ができない;食事は、不良またはそれに近い状態
この分類は小発作と中発作の差が少し離れているように思いますが、実際の発作状態を細かく厳密に分類することは難しいため、実用上優れたものと思います。そして多くの発作は小〜中発作に当てはまることが体験上わかりますし、またその段階で早く発作を鎮めることがとても大事になります。
ごく軽い、呼吸困難もそれほど意識されない(実際幼児では発作の初期に息が苦しいという意識はあまりないことが多い)段階では水を飲んだり、おとなしくして大きめの呼吸をゆっくりとさせることで喘鳴も消えてしまうことがあります。いろいろな書物では水分をとり腹式呼吸をまずさせるよう書いてありますが、ごく軽い発作の時にはそれでよいと思います。 しかし薬物をなるべく用いまいとして、軽くならないのにもう少し、もう少し、と腹式呼吸にこだわることはあまりおすすめしません。
薬物療法の柱は気管支を拡げる薬です。これは交感神経刺激剤(ベータ刺激剤)と、キサンチン系薬剤(薬物名としてテオフィリン)とに分けられます。ベータ刺激剤は吸入、内服、さらに注射と各種あります。テオフィリンは内服と注射があり、吸入はありません。
ベータ刺激剤には多くの種類があり、商品名も多数ですが、まずはかかりつけの先生から処方される薬物がどの種類にはいるのかを知っておく必要があります。その理由は、時にいつもとは違う先生にかかることもあると思いますが、名前だけがちがって同じ種類のものが出され、二重に内服してしまう危険性を避けるためと、喘息の治療は医者まかせだけでは良くない、という考えから、使っている薬の内容、目的をきっちりと把握していただきたいからです。
※ベータ刺激剤は多くのものがあると述べましたが、あえて商品名を挙げてみます。
ベータ刺激剤
・ボスミン(注射) ・メジヘラー(吸入) ・セダンゾール(吸入) ・プロタノールL(吸入・注射)
・アスプール(吸入) ・アロテック(内服・吸入) ・ベネトリン(内服) ・サルタノール(吸入)
・ブリカニール(内服、注射) ・イノリン(内服、吸入) ・アストーン(内服) ・メプチン(内服)
・メプチンエアー(吸入) ・ホクナリン(内服) ・ベラチン(内服) ・ベロテック(内服・吸入)
・ポルボノール(内服) ・アトック(内服) ・スピロペント(内服) ・ブロンコリン(内服)
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テオフィリン系の薬物
・ネオフィリン(内服・注射) ・テオドール(内服・徐放剤) ・テオロング(内服・徐放剤) ・スロービッド(内服・徐放剤)
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テオフィリン系の薬物は、ネオフィリン以外は内服はすべて徐放剤です。この徐放剤については後ほど述べます。
これらを全部覚える必要は、無論ありませんが、お子さんに出された薬の名前がわかれば、この中に含まれているかを見ていただければよいと思います。
ベータ刺激剤の特徴は比較的速やかに効果がでてくる点ですし、製剤によっては吸入という直接気管支に働かせることができる有利さを持っています。テオフィリン系の徐放剤とは内服をするとゆっくりと吸収されていき、定期的にきっちり内服することによってある程度一定の薬物の濃度を保とうとするものです。
そこで急に起こってきた呼吸困難に対してはまず第一にベータ刺激剤の吸入を行います。 一回の吸入ですっかり楽になってその後のぶり返しがないときはそれでよいのですが、再び苦しくなってくるときには吸入だけで全部まかなおうとするのはよくありません。内服や、程度にもよりますが時に点滴などをしなければならないこともあります。
薬を飲む(内服)ことは我々日本人にとってなじみの深い治療法ですので、気管支喘息発作の治療でも諸外国に比べて内服が多いのが実状です。そこでよく知っておくべきこととして、ベータ刺激剤の内服は早く効果を出します。テオフィリン系薬物では、ネオフィリンは吸収が早いので効果も早く、急に起きてきた発作をくい止めるのに適切な薬です。
ところがテオフィリン系の徐放剤は、たびたび起こってくる発作を前もって(数時間前から)押さえようという目的で開発されたものです。その意味では次に述べます予防的な治療において強力な効果を発揮します。従っていつもは調子が良いために常日頃から気管支を拡げる薬物を用いていない方が、たまたま発作になって、そのときに徐放剤を内服しても、効果がでてくるのは数時間後ですので、発作の程度によっては間に合わずに苦しい思いをしてしまうことが充分に考えられます。これらのことを考えますと、日頃は調子の良い患者さんの場合は、ベータ刺激剤の吸入あるいは内服、さらにネオフィリンの内服などを用意しておけばよいと思います。
大発作に対しては切り札的にステロイドを用います。ステロイドについては副作用に関する情報が多く行き渡っていますが、大発作の場合にはしっかりと用いた方がよいと思います。短期間に充分量を使って、発作が良くなるに従って速やかに減量していけば、大きな副作用は殆ど現れません。気管支喘息はこじれると気管支での炎症がなかなかよくならずに重症化してしまいますので、その炎症を鎮めるステロイドは経験のある医者が注意をしながら用いれば非常に有効なものです。
程度はそれほどではなくとも、発作が多いタイプではテオフィリンの徐放剤を用いて24時間いつでも薬物の血中濃度をある程度に保っておこうという治療法がとられます。 これを RTC (round the clock) 療法といいます。
成長過程にある小児にとって薬剤をいつも内服していることには抵抗があるとは思いますが、気管支喘息の特徴として、明らかな発作にならなくてもいわば水面下での発作状態(これはアレルギーの反応がいつも起こっていることと関係します)があり、見かけの元気さにだまされて適切な治療をしないと、知らないうちに呼吸機能が劣ってしまうことがあります。そのためにより積極的な治療法として RTC 療法が用いられます。体重あたりの薬の量が効果を表すのに微妙に関係しますので、昔からいう、薬のさじ加減という言葉がよく当てはまる治療法です。実際の内服の仕方、量などのこまかいことはかかりつけの先生に相談してください。
こどもの気管支喘息の大部分はアレルギーの素因を持っており、家の中の塵ほこり中のダニ抗原に対して反応することで発作あるいは発作準備状態を作っています。そのために抗アレルギー剤がしばしば用いられます。
吸入と内服の両方がありますが、気管支喘息に対してもっとも効果があるものは吸入で用いられるインタールという薬です。1日に2〜4回吸入をします。効果は、抗アレルギー剤のなかでは比較的早く現れます。内服の抗アレルギー剤は多くのものがあります。抗ヒスタミン作用もあるために少し眠気を催すものとそうでないものとがあります。この眠気がでるのは個人差がありますが、学校に通っている学童以上の年齢では眠気を催さない方の抗アレルギー剤を選ぶ場合が増えます。時にインタールと内服の抗アレルギー剤を併用することがあります。いずれも内服の場合には効果がでるまで数週間かかりますので1週間くらいの内服だけで、効かないという判断はしない方がよいと思います。ただしインタールほどの切れ味はありません。どの抗アレルギー剤も発作押さえではないことをよく理解する必要があります。
かなり発作が多い重症型の場合の予防的治療として、最近は小児科でも大人と同じように吸入のステロイド(ベクロメサゾン)を用います。副作用は内服に比べますと非常に少なく、効果も明らかなためこれを用いる例は次第に増えています。
副交感神経の抑制を目的とした吸入製剤(アトロベント、フルブロン、テルシガン)があります。気管支での副交感神経が優勢になっていると発作を起こしやすく、特に咳の多い例やベータ刺激剤が思ったより効果を挙げないときにこれを使うと良いようです。
発作のコントロールとは異なって、アレルギーの反応性を何とか軽くしようとの目的で減感作療法が行われます。最近では以前よりも薬物による治療が進歩したことと、この減感作療法は長年行わなければならない、注射療法であるなどの理由で新たに開始する例は減っています。気管支喘息に対する減感作療法はわが国ではハウスダストのエキスを用いてほぼ毎週皮下注射で行います。効く例では数カ月後に効果がでてきます。
減感作療法を抗原に対する特異的療法とすると、非特異的療法といわれるものがいくつかあります。パスパート、ブロンカスマベルナなどの細菌製剤、ノイロトロピン、ヒスタグロビン、アストレメジンなどそれぞれ作用の仕方は違いますがいくつかの注射剤があります。なかなか治療が難しいときには試してみて良いものと思います。
室内の環境をアレルギー反応をおこしにくいように、さらに気管支の粘膜をわざわざ傷つけることの無いように整備していくことは薬物療法と同じように大事なことです。もっとも影響が強く、愚かしい行為は喫煙です。中学、高校になって本人が喫煙するなどということは論外ですが、親の喫煙による影響は無視できません。すぐに禁煙は無理であっても将来の禁煙へ向けて親の方も努力をする必要があります。
寝具の乾燥と掃除機による吸引掃除はダニ抗原を減らすことに効果があります。天日に干したあとは普通はたいて布団を取り込みますが、そのときにめんどうではありますが電気掃除機で吸引掃除をしてください。
鍛錬という言葉は強制的であまり好みませんが、意味するところは、水かぶりや乾布摩擦をすることで皮膚を刺激したり、適度の運動をすることによって精神的にも強く、自己管理のできる、ひいては気管支の過敏性を弱めようというものです。早寝早起きの日常生活も人間の自律神経系の働きを考えると、それがうまく働くためには重要なことです。
気管支喘息の治療はどの方法を採るにしてもじっくりと継続することが重要で、安易なやり方はありません。これはアトピー性皮膚炎の治療とも同じことで、体質に根ざしたものを治療するときは今必要なことと、将来にわたって必要なこととをうまく組み合わせて、工夫しながら気長に行っていくことが大事です。そのためには医者まかせだけでなく、自分でできること、親のできること、家族の人ができること、それぞれを組み合わせて行っていきましょう。
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