ステロイド剤に関しますと、いっときは確実な効果があるためにややもすると医者の方もそれに頼ってしまうきらいがありますが、その限界をよくわきまえ、他の補助的な治療法、生活環境の改善などを織り込んだ治療をしていくことによって、かなりの程度のアトピー性皮膚炎でも改善することが可能です。
ステロイドも他の薬剤と同じように、ただ良い、或いは頭から悪い、と決めつけるものではありません。
実際の治療については小児科医と皮膚科医で多少異なる点はあります。乳幼児の場合と、さほど重症でないときにはまず小児科を受診する方がよいでしょう。かなりの重症のときは皮膚科医の協力或いは指導のもとに小児科病棟へ入院することもあります。いずれにしましても、皮膚症状がかなりひどいときは局所療法をきっちりと行わなければなりませんから、皮膚科医の指導が大切になります。その時にステロイドを用いることに対してどうしても抵抗感があるときにはその旨はっきりと意思を表明すべきと考えます。
治療の概略をここで示しますが、医療というものはあくまでも個別のものですから、患者さんの状態によって、あるいは親の考え方、生活環境の違いによって治療そのものが変化し得るということを一応お断りしておきます。
前書きがずいぶんと長くなりましたが、私共の小児科にて行っている治療のおおよそのところを述べます。
まず局所療法ですが、アトピー性皮膚炎の程度によっては、その炎症を鎮めるためにステロイドの塗り薬を用います。しかし漫然と同じステロイドのみを使うのではなく、最初は1週間ごとに来院していただき、ある程度の強さのステロイドからだんだんと弱いものへと変更していきます。
ステロイドの塗り薬は現在弱い方を1とすると、1〜5までの5段階あります。小児科領域では5の最強のものはまず使うことはありません。かなり強い症状であっても3から始めることが多く、ごくたまに4のものを使わざるを得ないことがある程度です。そしておよそ3日づつ程度を弱めていくことを試みます。またからだのなかで少し強めのステロイドを塗っても比較的大丈夫なところと、そうでない場所がありますから、場所による塗り分けも大事です。顔と首、そして外陰部はその外のからだ、あるいは手足に比べて1段階弱いものを使う方が無難です。朝と入浴後の1日2回塗りますが、翌週にみるときは1段階弱いものを塗った状態での変化を見ます。また皮膚の乾燥が痒みを呼びますから、保湿剤を基礎薬として積極的に塗ります。
最も安定している例ではその保湿剤のみであとはなにも塗らないで良い皮膚の状態を維持できます。かゆみがどうしても強く、掻くなといっても強烈な感覚のため掻かざるを得ず、ひどいときは引っ掻いて気がついてみたら血だらけで、それを見る親御さんの方はとても気持ちが落ち込んでオーバーな表現ではなく、絶望的になってしまうこともありますが、そのようなときは飲み薬で、抗ヒスタミン作用(痒みを押さえる作用)を持った抗アレルギー剤にさらに抗ヒスタミン剤そのものを上乗せし、それでも夜も眠れないときには軽いトランキライザー(精神安定剤)を処方することもあります。
但しそのような困難な患者さんは幸い少ないのです。多くは抗ヒスタミン剤単独、あるいは抗アレルギー剤単独と局所療法で次第に改善していきます。