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病気とけが
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タイトル アトピー性皮膚炎はどのようなものでしょうか

アトピー性皮膚炎の特徴は一言でいいますと、ともかく痒いということです。この痒みというのはアトピー性皮膚炎の一大特徴でありながら、どうして痒くなるのかという理由、原因についてはなかなか研究が進みません。痒みは本人にしか分からない感覚のためそれを客観的に評価することが出来ないことも研究が進まない大きな理由です。

アトピー性皮膚炎の患者さんの大部分は血液中の IgEの値が高く、また環境中にある色々な抗原(アレルゲン)に対する特異 IgE抗体も検出されることや、抗ヒスタミン剤がある程度痒みに効くことからアレルギーの反応が根本にあることは確かです。ただアレルギー反応だけでアトピー性皮膚炎を説明しようとすると、例えば特徴的な乾燥した肌の成立ちなどについては無理があるようです。さらにアレルギーの素因がないのに立派なアトピー性皮膚炎を示す患者さんもいます。けれども特に乳幼児では殆ど全てと言ってよいほどアトピー性皮膚炎の患者さんはアトピーの体質を示します。

アトピー性皮膚炎は痒いと述べましたがそれ以外にどのような特徴があるのでしょうか。それらの特徴はとりもなおさずアトピー性皮膚炎を医者が診断するときにどのような手がかりを使っているのかという疑問と同じものですので、厚生省の研究班が作りましたアトピー性皮膚炎診断の手引きを参考のために示します。

<表:アトピー性皮膚炎の診断の手引き>
(厚生省心身障害研究「小児期のアレルギー疾患に関する研究」
班長:三河春樹京都大学医学部小児科教授(現・関西電力病院院長))
1. アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とは、アトピー素因のあるものに生じる、主として慢性に経過する皮膚の湿疹病変である。このため、本症の診断にあたっては、いまだ慢性経過の完成を見ていない乳児の場合を考慮し、年齢に対する配慮が必要である。
(注:アトピー素因とは気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎の病歴または家族歴を持つものをいう)
2. アトピー性皮膚炎の主要病変

(1) 乳児について
  1. 顔面皮膚または頭部皮膚を中心とした紅斑または丘疹がある。耳切れが見られることが多い。
  2. 患部皮膚には掻は痕がある。
    (注:紅斑、赤い発疹;丘疹、盛り上がった発疹;掻は痕、掻き傷の痕)

(2) 幼児・学童について

  1. 頚部皮膚または腋窩、肘窩もしくは膝窩の皮膚を中心とした紅斑、丘疹または苔癬化病変がある。耳切れが見られることが多い。
  2. 乾燥性皮膚や粃糠様落屑を伴う毛孔一致性角化性丘疹がある。
  3. 患部皮膚に掻は痕がある。
    (注:苔癬化、つまむと硬い、きめの粗い皮膚;粃糠様落屑、米ぬか様の皮膚の断片)

3. アトピー性皮膚炎の診断基準

(1) 乳児について
「2. アトピー性皮膚炎の主要病変」に示す病変のうちa、bの双方を満たし、(別表)に示す皮膚疾患を単独に罹患した場合を除外したものをアトピー性皮膚炎とする。


(2) 幼児・学童について
「2. アトピー性皮膚炎の主要病変」に示す病変のうちaあるいはb、およびcの双方、並びに下記のイ)ロ)の条件を満たし、(別表)に示す皮膚疾患を単独に罹患した場合を除外したものをアトピー性皮膚炎とする。

イ)皮膚に痒みがある。
ロ)慢性(発症後6か月以上)の経過をとっている。



(別表) 皮膚疾患一覧
おむつかぶれ おむつに覆われた皮膚に見られる鱗屑を伴う光沢のある不整形紅斑。時にびらんを伴う。
あせも 夏に発生する小水疱、軽い痒みがある。炎症が加われば、赤い小水疱、膿疱となる。
伝染性膿痂疹(とびひ) 皮膚の細菌感染により生じる水疱、膿疱。水疱、膿疱がやぶれるとびらんとなる。
接触皮膚炎(かぶれ) アレルゲン接触部位に一致した紅斑、丘疹、小水疱および急性湿疹様変化。
皮膚カンジダ症 感冒、下痢、抗生物質投与に伴いやすい鱗屑、紅斑、紅色丘疹。
カンジダを検出する。
乳児脂漏性皮膚炎 頭、顔面に生後1か月以内に発生する、痒みを伴わない鱗屑、油脂様の痂皮。すみやかに治癒。再発はない。
尋常性魚鱗癬(さめはだ) 多くは生後数カ月で発症、アトピー性皮膚炎を合併することもある。四肢伸側、体幹の皮膚が乾燥し、粃糠様ないし小さい葉様の鱗屑を形成する。常染色体優性遺伝。
疥癬 家族内、集団生活に発生する。指、手関節屈側、肘窩、腋窩、下腹部、外陰部に生じる、痒みの強い紅色丘疹、小水疱、小膿疱、疥癬トンネルがある。
虫刺され 虫刺部に生じる丘疹。痒みがある。
毛孔性苔癬 四肢(上腕、大腿)の外側に対称性に現れる、毛孔に一致した、皮膚色、淡紅色、褐色の固い角化性の丘疹。


分りづらい文章とは思いますが、要するにこの診断基準ではまずアトピー素因があることという規定を設定しています。

年齢に関係なくアトピー性皮膚炎は痒く、体をよくみると引っ掻いている痕があり、赤ちゃんでは顔が赤くなることが多い。また耳切れも多くみられ、診断をする際に大事な所見です。そして脂漏性湿疹単独の変化はアトピー性皮膚炎とは言わないというものです。
実際には生後2〜3ヵ月くらいの赤ちゃんではアトピー性皮膚炎と脂漏性湿疹の両方を持っていることが多いので話は複雑になりますが、その場合、正確な診断をするためにはしばらく経過を見る必要が出てきます。年齢が上がって幼児以降になると、皮膚の変化は顔から首、ひじや膝の部分に移ってきます。ひじや膝は、関節が曲がる側のことが多いのですが中には関節の伸びる方に強く出ることもあります。そして皮膚炎が出来てから時間がたっていることが多く、その間にずいぶんと痒くて引っ掻いていますから、皮膚そのものが厚くゴワゴワになっています。これを苔癬化といいます。この苔癬化は赤ちゃんの場合もアトピー性皮膚炎がかなりひどくて適切な治療が行われていないときに出現することがありますから、幼児以降だけの特徴というわけではありません。そして広い範囲の皮膚の乾燥傾向が強く、いわゆるパサパサの状態になって、衣服を脱ぐと細かな皮膚の断片がパラパラと、ひどいときはふけのように体のあちこちから落ちてきます。
またとびひはそれが単独であるときはアトピー性皮膚炎の診断から除くことになっていますが、夏などは、アトピー性皮膚炎に上乗せで起こってくることも多いのが事実です。
以上のような事柄を総合してアトピー性皮膚炎の診断をするわけですが、ごく軽い場合、または皮膚に変化が出て間もないときを除いて診断そのものは比較的簡単にできます。
赤ちゃんの場合は最初は乳児湿疹です、といわれることも多いと思いますが、医者が誤診をしたわけではなく、痒みが最初ははっきりしないことがあり、また皮膚の変化も時間をかけて変化を追う必要があるためと解釈してください。そして初めて医者を訪れるときはやはり小児科へまず行くべきと考えます。


著者:岩田 力
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